演目を知る

チャイコフスキー3大バレエ
その他全幕バレエ

バヤデルカ

恋か名誉か…
戦士ソロルが迷い込む愛の迷宮

あらすじ
舞台はインド。舞姫ニキヤは、戦士ソロルと愛し合っている。人目を忍んで二人は逢い、ソロルは、永遠の愛を神聖な火に誓う。ニキヤを愛する大僧正は、それを見て嫉妬に狂う。藩主の屋敷へ呼ばれたソロルは、その娘ガムザッティとの結婚を言い渡される。躊躇する彼だが、藩主からの命令は絶対。ガムザッティの美しさにも心を動かされた彼は承諾する。それを知った大僧正は藩主に、ソロルとニキヤの仲を密告。藩主はニキヤを亡き者にしようと考える。一方、ニキヤの存在を知ったガムザッティは、彼女を屋敷に呼び、ソロルを諦めるよう説得する。だが、ソロルと愛を誓ったニキヤは、追いつめられた挙句ガムザッティにナイフを向ける。激怒したガムザッティはニキヤヘの復讐を誓う。ガムザッティとソロルの婚約式に、舞姫として呼ばれたニキヤは、ソロルからだと渡された花籠を抱き踊るが、忍ばされていた毒蛇に噛まれて死ぬ。後悔と悲しみに沈むソロルは、アヘンを吸い、ニキヤの幻影と出会う。そして、ガムザッティとソロルの結婚式。神聖な火への誓いを破ったことにより、神の怒りで世界は崩壊してしまう。

レニングラード国立バレエの「バヤデルカ」のここが見どころ

Point01 「幻影の場」の美しさ

三角関係がテーマになる作品は数多い(「ジゼル」「ラ・シルフィード」)が、これだけ、<激しい>バレエは珍しい。嫉妬、殺人未遂、復讐、殺人と、サスペンスドラマさながらの展開。だが、その果てで、ソロルが見る幻影=「影の王国」の場面は、すべてを浄化するかのよう。プティパのバレエならではの演出だ。ヒマラヤの山から次々と舞い降りてくる精霊たちは、片脚を上げ上体を反らすポーズを何度も繰り返す。世界最高峰といわれるレニングラード国立バレエのコール・ド・バレエは、繊細な動きで「幻影」を詩情豊かに描き出す。

ニキヤとガムザッティの激しい衝突
幻影の場
ニキヤの亡霊が現れる

Point02 よみがえった最終幕

19世紀に生まれた「バヤデルカ」は、ほかの作品同様に、時代の流れとともに様々に演出を変えていった。最終幕は失われ、「影の王国」で終わることも多い。幻想的なラストはそれはそれで美しいのだが、物語として中途半端な印象を受けなくはない。原典重視のレニングラード国立バレエの「バヤデルカ」は、「影の王国」の後、目覚めたソロルとガムザッティの結婚式が行われる。原典通りのストーリーだが、振付や音楽自体も失われているために、この部分は、当時の音楽監督アニハーノフが曲を補作し、元芸術監督ボヤルチコフが振りつけている。つまりレニングラード国立バレエのオリジナルの場面。赤いドレスのガムザッティの背後に純白の衣裳のニキヤの亡霊が佇むシーンは幻想的で、ソロルの動揺にも納得。最後までスリリングなドラマ展開が楽しめる。

Point03 もう一人のヒロイン

この作品のヒロインといえば舞姫ニキヤだが、その恋敵ガムザッティも重要な役だ。ソロルとの婚約式では華やかな踊りを披露、またニキヤとのやり取りでは、演技力が求められる。令嬢ならではの気位の高さ、自分の幸せを誰にも邪魔されたくないという意思の強さ、そして愛する男性への思慕。「嫌な女性」になりすぎず、哀れみも感じさせるこの役は、じつは非常に難しい。さて、その品格と美しさと可愛らしさで、スーパースターのルジマトフをして「最高のガムザッティ」と言わしめたのはシェスタコワ。彼女が凄いのは、同時にニキヤ役も素晴らしいこと。両方の役で是非見ておきたいプリマだ。

シェスタコワのガムザッティ
シェスタコワのニキヤ
象にのって登場するソロル
毒蛇にかまれるニキヤ

Point04 大きな象と動く蛇

インドが舞台のこの作品には、色々な動物が登場する。婚約式には、豪華に装飾された象が現れる。この象にはソロルが乗っているのだが、幌の下に隠れ気味。ガムザッティらに向かって高いところから挨拶するソロルをお見逃しなく。ニキヤを殺す手段として登場するのは毒蛇。ニキヤや、蛇を捕まえる苦行僧役の「技」で、それは生きているように見える。また、ニキヤの死後、落ち込むソロルを励まそうと連れてこられるのは、蛇と蛇使い。この蛇は笛にあわせて、くねくね動く。ステージ上は薄暗く、ソロルの様子も気になるが、レニングラード国立バレエのテクニカル・チームが編み出した「技」にも注目したい。

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