あらすじ
ルネサンス期のイタリア、ヴェローナ。モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエット―長年反目しあい、争いが絶えない両家に生まれた若い二人が、仮面舞踏会で出会い、一目で恋に落ちる。その深夜、自室のバルコニーに佇むジュリエットのもとへロミオがやってくる。気持ちを確かめ合った二人は、翌日、神父のもとで秘密の結婚式を挙げる。帰り道、広場では再び両家の争いが繰り広げられている。仲裁しようとしたロミオだが、親友マキューシオを殺されたことに逆上し、ジュリエットの従兄弟ティボルトを殺してしまう。その夜、ジュリエットの部屋で二人は初めて結ばれる。翌早朝、街を追放されたロミオは出て行き、一人残ったジュリエットに、両親はパリスという青年との結婚を強要する。途方に暮れた彼女は神父にすがり、飲めば仮死状態となる薬を渡す。ジュリエットは両親に結婚を承諾し、その後、仮死薬を飲む。墓所で眠る仮死状態のジュリエットのもとにロミオが駆けつける。真実を知らない彼は、絶望のあまり毒をあおって死ぬ。やがて目を覚ましたジュリエットは息絶えたロミオを見つけ、短剣で自分の胸を刺し、彼の後を追う。

ロミオとジュリエット シェイクスピアの名作は数多いが、最も有名な「シェイクスピアの名作バレエ版」は、「ロミオとジュリエット」だ。ストーリーがわかりやすく、主役が若い男女であるなど、その理由は色々あるが、決定的なのは、素晴らしい音楽に恵まれたことだ。プロコフィエフの音楽は、それぞれの場面を生き生きと描写する。たとえば戦いの場面では、剣がぶつかり合う音もオーケストラの一部となる。恋人たちがじっと見詰め合うシーンでは、流れる音楽が、二人の言葉にならない思いを訴える。「音楽の力」が実感できるバレエ作品だ。

レニングラード国立バレエの「ロミオとジュリエット」で最初に驚かされるのはその舞台美術の豪華さ。立体的に組まれた舞台セットは、さながら中世絵画を見るよう。衣裳も美しい。 重厚な舞台のなかで、ロミオとジュリエットの若さは光ってみえる。たとえば仮面舞踏会でのデコラティブな衣裳を着た大人たちは彫像のよう。その間を、恋する二人は駆け抜ける。 躍動感に満ち、生命力にあふれた二人だからこそ、その終焉が、あまりに悲しい。

ロミオの親友マキューシオが命を落とす間際、その背後に死の影が忍び寄る。そしてロミオに剣を渡す。 ロミオとジュリエットの運命を操るかのような、死の影。レニングラード国立バレエの「ロミオとジュリエット」にしか現れない、謎の役だ。 墓地で目覚めるジュリエット