演目を知る

チャイコフスキー3大バレエ
その他全幕バレエ

海賊

恋と冒険とロマン溢れるスペクタクル 上演時間:約1時間50分【第1幕約1時間(休憩20分)第2幕約30分】

あらすじ
海賊船が荒海で難破し、生き残った三人の海賊、首領コンラッドと、その友人アリとビルバントが島の岸辺に打ち上げられる。メドーラとギュリナーラらギリシャの娘たちが彼らを見つけ介抱する。急襲したトルコ兵から海賊をかくまった娘たちだが、彼女たち自身が奴隷商人ランケデムに捕えられ、奴隷市場へと連れて行かれる。メドーラに一目で恋をしたコンラッドは友人たちとともに変装して追いかける。ギュリナーラは、この島の支配者セイード・パシャへ売られ、続いてメドーラが競売にかけられたそのとき、コンラッドが正体を現す。コンラッドはメドーラを海賊が隠れる洞窟へと連れてゆく。メドーラの頼みで、捕えていた娘たちをコンラッドは解放する。ビルバントは反対するがコンラッドは聞き入れない。それを恨む彼に奴隷商人は復讐をそそのかす。コンラッドのワインに眠り薬を入れ、殺そうとするが目をさましてしまう。奴隷商人はメドーラをパシャのハーレムに連れ去る。コンラッドは托鉢僧に化けハーレムに潜入し、メドーラたちを助ける。アリとギュリナーラ、コンラッドとメドーラは、新しい幸せな人生へと漕ぎ出す。

レニングラード国立バレエの「海賊」のここが見どころ

Point01 奴隷から解放されたアリ

「海賊」というと、まずその有名なパ・ド・ドゥだけが長く日本では知られていた。いやロシア以外では「海賊」といえばパ・ド・ドゥだった。しかもその男性ヴァリエーションが有名だった。それを世界に広めたのは、伝説のダンサー、ルドルフ・ヌレエフである。全幕でそのヴァリエーションを踊るのは、当然、主役だと思われていたが、じつはそうではなく、アリと名づけられた奴隷だった。ドラマ上の役割はほとんどなく、出番も少ないこの役だがファルフ・ルジマトフというスーパー・スターを得て、全幕「海賊」で最も輝く人物となった。ヌレエフの偉業をルジマトフが継いだともいえるだろう。ルジマトフは、自ら改訂演出版を発表するに際し、アリを「主役コンラッドの友人」と位置づけている。愛するアリを、奴隷という身分から解放したのだ。

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アリ
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メドーラとアリ

Point02 スピーディな場面展開

レニングラード国立バレエでは1955年に「海賊」を初めてレパートリーに取り入れた。評論家でありバレエ史家であるユーリー・スロニムスキーが台本を作成し、クラシック・バレエを熟知するピョートル・グーセフが振り付けた。その後、数え切れないほどコンラッド役を演じた当時の芸術監督ボヤルチコフは1994年にグーセフ版を復刻した。ルジマトフが古巣マリインスキー劇場で踊ってきた「海賊」もグーセフ版が基本であり、この新版(ルジマトフ版)もこれら「海賊」の上演史の延長線上にある。ルジマトフ版のドラマの流れは従来版と同じ。ただ、その展開はスピーディになった。従来の第1幕と第2幕は合併。つまり奴隷市場(従来の第1幕2場)でメドーラを救ったコンラッドは、そのまま海賊の隠れ家の洞窟(従来の第2幕)へと移動する。そのスピード感は、やはり現代の観客には心地よい。

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コンラッド
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ギュリナーラと奴隷商人ランケデム

Point03 男性奴隷の登場

全幕バレエ「海賊」は、踊りの見せ場が沢山ある。Point01でも述べた、有名なグラン・パ・ド・ドゥ(全幕ではパ・ド・トロワ)、奴隷市場で奴隷商人とギュリナーラが踊る奴隷のパ・ド・ドゥ、さらに最終幕で女性3人が踊るクラシック・トリオなどは、それぞれ独立したコンサート・ナンバーとしても人気だ。ルジマトフ版でも、それらのシーンは大切にされており、振付はほぼ従来のまま。ただ、大きく変えているのは、第1幕、奴隷市場でのアルジェリアの踊りだ。従来ならば、アルジェリアの女性がエネルギッシュに踊るのだが、ここでは男性が踊る。褐色の肌のエキゾチックな男性たちが、怒りを爆発させるように踊る様は壮観だ。彼らは、金持ちたちにモノのように買われる奴隷たち。もともとは奴隷だったアリだけでなく、シャリアール王の奴隷として檻に閉じ込められている金の奴隷(『シェヘラザード』)など、「奴隷役」で卓越した演技を見せてきたルジマトフだから、男性奴隷を活躍させるという発想に至ったのかもしれない。

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アルジェリアの踊り
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パレスティナの踊り
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奴隷市場(第1幕2場)
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パシャのハーレム(第2幕)
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