

あらすじ
クリスマス・イブの夜、マーシャの家では多くの客を招き、賑やかなパーティが行われている。マーシャの名付け親ドロッセルマイヤーは彼女に、くるみ割り人形をプレゼント。他の子供たちは見向きもしないこの人形を、マーシャは気に入り、一緒に遊ぶ。やがて夜は更け、マーシャも、くるみ割り人形を客間のツリーの傍らに置いてベッドへ。だが、くるみ割り人形が気になり、一人でこっそり客間に戻る。すると、どんどんツリーが大きくなり、部屋の隅々からはネズミが出てくる。くるみ割り人形は兵隊人形を率い、ネズミたちとの戦争が始まる。くるみ割り人形がネズミの王様に倒されそうになったとき、とっさにマーシャはロウソクを投げる。見事、それはネズミの王様に命中し、くるみ割り人形は間一髪で助かる。次の瞬間、くるみ割り人形は美しい王子に変身する。王子はマーシャを連れ、美しい雪の国を通り、おとぎの国へと招待する。おとぎの国では各国の人形たちが、様々なダンスを披露し、マーシャも王子たちと踊る。


「古典バレエは原典に基づく」が基本のレニングラード国立バレエだが、この作品は特別だ。原典が残っていないこともあるため、元芸術監督ボヤルチコフのオリジナル演出・振付。その特長は、ずばりファンタスティック! 現実の世界が、いつの間にか夢の場面となってゆく。ヒロイン、マーシャは、とても素直で、だから人形たちの世界に、自然と入っていけるのだろう。よくある演出のように、「夢から醒めました」というラストも用意されていない。ファンタジーに酔いしれることができる作品だ。 |
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第一幕のラスト、「雪の国」の場は、レニングラード国立バレエが誇るコール・ド・バレエ(群舞)が大活躍。彼女たちの踊りは、キラキラと光り輝いている。チャイコフスキーの音楽も素晴らしい。この雪は、北国でないと見ることができない粉雪。風が吹くと舞い上がるような軽やかさは、この作品が生まれたロシアのオーケストラや舞踊手でないと、なかなか出せない美しさだ。 |
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美術の豪華さも見どころの一つであるレニングラード国立バレエ。「くるみ割り人形」の美術も独創的で、観客をファンタジーの世界に誘ってくれる。舞台中央のクリスマスツリーはどんどん大きくなり、すべてを包み込むようにも見える。また、おとぎの国の背景は、ロシア美術ならではの暖かさを感じさせる。舞台の隅々まで目を凝らし、独自の美意識を堪能しよう。 |
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