演目を知る

チャイコフスキー3大バレエ
その他全幕バレエ

ドン・キホーテ

バルセロナで繰り広げられる
陽気な恋物語

あらすじ
スペイン・バルセロナが舞台。宿屋の娘キトリは、床屋のバジルと恋人同士。お互いに結婚を望んでいる。だが、娘をお金持ちのガマーシュに嫁がせたいキトリの父ロレンツォは二人の仲に大反対。そんなやり取りの最中、自分を中世の騎士だと信じ込んでいるドン・キホーテが従者サンチョ・パンサとともにやってきて、キトリを、憧れのドルシネア姫と思い込む。父の反対を逃れるようにキトリとバジルはジプシーの野営地へ。ドン・キホーテたちも続いてやってくる。そこで行われた人形劇を皆で見るうちに、ドン・キホーテは現実との区別がつかなくなり、悪者を退治しようと風車に突進、気絶してしまう。夢の中でドン・キホーテは、憧れのドルシネア姫と出会う。一方、酒場へやってきたキトリとバジル。彼らを追ってやってきたキトリの父は、娘をガマーシュと結婚させようとする。そこでバジルは自分の胸にナイフを突き刺す(じつは芝居)。キトリは嘆き哀しむふりをしながら、ドン・キホーテに父への説得を懇願する。キトリの父はしぶしぶ納得。バジルは飛び起き、二人は結婚する。

レニングラード国立バレエの「ドン・キホーテ」のここが見どころ

Point01 ラブ・コメディの決定版

バレエのヒロインは、妖精やプリンセスが多いが、この作品の主役は庶民的な女の子。茶目っ気たっぷりで明るく、恋人バジルが大好きな彼女は、私たちの周囲にもいそう。客席で見ていると、いつの間にか、二人の恋を応援したくなってくる。舞台のドラマに思わず入り込んでしまうのは、ダンサーたちの演技があまりにも自然だから。レニングラード国立バレエのダンサーたちが学んだロシアのバレエ学校では、踊りだけではなく、パントマイムや芝居も必修。バレエ団入団後も、様々な作品を通して演技力に磨きをかける。主役ペアはもちろん、キトリの父、ガマーシュ、ドン・キホーテ、サンチョ・パンサ・・個性際立つ登場人物の細やかな演技に注目したい。

キトリとバジル
ドン・キホーテとサンチョ・パンサ

Point02 ロマンティックなデュエットが復活

「ドン・キホーテ」も他の作品同様に、原典を見直しながらボヤルチコフが演出したレニングラード国立バレエのオリジナル。特徴的なのは、第2幕冒頭でキトリ&バジルがロマンティックに踊る場面。この部分は、音楽だけが残っているものの、いつの間にか踊りは失われていたため、ボヤルチコフが新たに振りつけた。元気なキトリが、恋人とともに、しっとりと踊るシーンだ。それに続くジプシーたちの野性味あふれるダンスも見どころ。

ドルシネア姫
森の女王

Point03 夢の世界は森の中

風車を大男だと思い込み、突進したドン・キホーテは気を失い、夢を見る。第2幕2場の「夢の場」は、幕が開くと、観客からため息が漏れるほどに美しい。現実の世界が一気に、幻想の空間へと変る。それはドン・キホーテが見た夢。憧れのドルシネア姫(キトリ役のダンサーが演じる。つまり二役。現実に生活する女の子と、夢の世界に現れる姫をいかに演じ分けるかが、ダンサーの実力の見せ所)や森の女王、そしてキューピッドが微笑んでいる・・・。それぞれのソロももちろんだが、白いチュチュ姿のコール・ド・バレエ(群舞)も見どころのひとつだ。

キューピッド

Point04 超有名なグラン・パ・ド・ドゥ

最終幕、結婚式でキトリとバジルが踊るグラン・パ・ド・ドゥは、この部分だけ抜粋してバレエ・コンサートなどでもよく踊られる。大いに盛り上がる作品だから、トリとしてラストを飾ることが多い。また、テクニック的にも難しいため、バレエ・コンクールにもこの作品は必ずといって良いほど登場する。全幕の中でのこのグラン・パ・ド・ドゥは、幸せの絶頂にあるキトリとバジルが、全員の祝福を受け、伸びやかに踊る。恋人どうしの甘い空気を発散しつつ、どこまでもカッコよく、粋に踊る彼ら。キトリの見せ場である連続32回転の大技で、一回ずつ回転するところをダブルやトリプルで回ったり、あるいは手の位置を変えてみたり。またバジルも、複雑なジャンプを取り入れたり。ダンサーそれぞれが、工夫を凝らすシーンでもある。

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