あらすじ
海賊船が荒海で難破し、島の岸辺に打ち上げられた海賊たちを、メドーラたちギリシャの娘たちが見つけ介抱する。海賊の首領コンラッドとメドーラは一目で恋に落ちる。そこにトルコ軍がやってきて、娘たちをさらって行く。娘たちは、奴隷市場で競売にかけられ、メドーラもトルコ総督に売り飛ばされそうになるが、アラブの高僧に化けたコンラッドらに助けられる。コンラッドはメドーラを海賊の隠れ家である洞窟に連れて行く。メドーラは、海賊に捕らえられた娘たちを故郷に返して欲しいとコンラッドに訴え、聞き入れられる。が、コンラッドの部下ビルバンドは、それを面白くなく思い、コンラッドに眠り薬をかがせ、殺そうとする。だがコンラッドが、目を覚ましたので、メドーラだけを連れ去っていく。メドーラが連れてこられたのはトルコ総督のハーレム。そこに、托鉢僧に化けたコンラッドがやってきてメドーラを助ける。コンラッドやメドーラたちは船に乗り、大海へと漕ぎ出でる。
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「海賊」といえば、バレエファンがまず思い出すのは、そのパ・ド・ドゥ。バレエ・コンサートやコンクールなどでは欠かせないナンバーだ。しかし、それを踊っている男性は、全幕の男性主役コンラッドではなく、その部下である奴隷アリである。全幕のなかでの奴隷アリの役割は、さほど重要ではない(だから「あらすじ」でも省略されがち)。だが、全幕中、最も有名なヴァリエーションを踊るのは、彼である。それらしい衣裳をつけた海賊のなかで、一人上半身裸といういでたち(貧しくて着るものがないというわけでもなさそう。パンツはかなり豪華なので)で、コンラッドに、かしずき、最後には、ヒロイン、メドーラの友人ギュリナーラと仲良く納まる謎の男性。この役は、ファルフ・ルジマトフはじめ、スター・ダンサーが踊り継いでいる。脇役で、出番も少ないが、誰よりも重要な登場人物だ。
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「海賊」は、男性たちが大活躍するアドベンチャー・バレエなのだが、女性群舞(コール・ド)が美しいシーンも、そこにはある。大金持ちの権力者であるトルコ総督パシャのハーレムだ。彼の幻想でもあるこの場面は、メドーラやギュリナーラを中心に女性たちが花を手に、華麗な踊りを披露する。「海賊」は、レニングラード国立バレエが誇るコール・ドが大活躍する作品でもあるのだ。
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「海賊」は、その初演の頃から、「難破シーン」が評判だった。レニングラード国立バレエでも、そのシーンは迫力満点だ。〜プロローグの舞台は大嵐の真っ只中。そこを大きな船が進んでいく。が、その船体は、大きく揺れ、やがてマストが折れ、波に飲まれてしまう・・・。その仕掛けは素朴で原始的なのだが、だからこそ味わい深く、一気にエキゾチックな「海賊」の世界に引き込んでくれる。絶対に見逃せない(遅刻厳禁)。
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